2009年04月22日

カマキリの起源

Evidence for Carboniferous origin of the order Mantodea (Insecta: Dictyoptera) gained from forewing morphology
OLIVIER BÉTHOUX and FRANK WIELAND
Zoological Journal of the Linnean Society
Volume 156 Issue 1, Pages 79 - 113


現生のカマキリの翅脈相を,気管配列まで含めて検討し,グランドプランを構築.その結果に基づき 'Protorthoptera' と呼ばれる,化石昆虫のまあいわゆるゴミ箱タクソンの中から,いくつかカマキリの stem group となるものを見いだしている.これにより,カマキリの起源年代は,石炭紀後期,これまで考えられていたより約175mya さかのぼる事になった.

翅脈相の解釈は,写真だけじゃちょっと分かり難いところもあるので,そのうち実物を見てみたい.いずれにしても,こういったねちっこい形態論文は大好き.
posted by 茶坊主 at 17:32| Comment(0) | 下等新翅類

2009年04月16日

内顎類系統

結構たて続けの更新.

Phylogenetic Relationships of Basal Hexapods Reconstructed from Nearly Complete 18S and 28S rRNA Gene Sequences
Yan Gao, Yun Bu, Yun-Xia Luan
Zoological Science 25(11):1139-1145


バイオディバーシティで引用した Luan et al. (2005) の続編のような論文.2005年論文では,28S のデータがごくわずかだったけど,今回は 28S のほぼ全長を含めたよってのが新しい点.

本来改善すべき問題は,別にデータの量云々ではなく,コムシとカマアシムシの塩基置換速度の加速と,それによる長枝誘引な訳で,問題ある事が分かってるデータを増やすというのは,目指す方向が違っていると思う.
posted by 茶坊主 at 10:19| Comment(0) | 無翅昆虫

2009年04月15日

脱皮動物の単系統性

めも

Cleavage and gastrulation in Pycnogonum litorale (Arthropoda, Pycnogonida): morphological support for the Ecdysozoa?
Petra Ungerer and Gerhard Scholtz
Zoomorphology, Published online: 9 April 2009


ウミグモの胚発生時の原腸陥入パターンから,脱皮動物の単系統性をサポートする情報が得られたそうだが,胚発生とかここら辺の高次系統に関してざっと読み流して理解できるほどの知識を持ち合わせていないので,まあとりあえずメモという事で.
posted by 茶坊主 at 11:27| Comment(0) | 節足動物

2009年04月09日

脈翅類の mt-phylogenomics

昨日2ヶ月ぶりに更新したと思ったら,今度は2日連続の更新.

A mitochondrial genome phylogeny of the Neuropterida (lace-wings, alderflies and snakeflies) and their relationship to the other holometabolous insect orders
Stephen L. Cameron, Jaron Sullivan, Hojun Song, Kelly B. Miller & Michael F. Whiting
Zoologica Scripta
Published Online: 7 Apr 2009


ラクダムシ,広翅,脈翅からそれぞれ1サンプルずつで,まあとりあえずやってみました的な感じですが,脈翅節+鞘翅節と広翅+脈翅の関係はそれなりに強く支持されている.せめて各目もう一種くらい欲しいね.
posted by 茶坊主 at 09:53| Comment(0) | 完全変態

2009年04月08日

シラミのミトコンドリアゲノム

久しぶりの更新です.ちょっとブログの本題とは外れるのですが,なかなかに刺激的な論文と思いますので,アップします.

The single mitochondrial chromosome typical of animals has evolved into 18 minichromosomes in the human body louse, Pediculus humanus.
Shao R, Kirkness EF, Barker SC.
Genome Res. 2009 Mar 31. [Epub ahead of print]


普通ミトコンドリアには1個の環状ゲノムが存在していますが,ヒトジラミではそれが18個の mini-circle と呼ばれる複数のプラスミドによって構成されている事が見いだされました.さらには,ミトコンドリアの組み替えの存在も示されています.今のところ,吸血性のシラミのみで見つかっていて,ハジラミでは見つかっていません.

同様のミトコンドリアゲノムは,線虫やニハイチュウで報告はありますが,昆虫ではもちろん初めて.シラミを含め,一部の生物ではミトコンドリア遺伝子の配列の変異が極めて大きい事が知られていますが,そのプロセスを探る上でも重要な発見です.

実は,同様の mini-circle の存在は,僕らも昨年夏にシカハジラミで独立に見つけてました.クローニングの許可申請とかで時間を食ってるうちに,先を越されてしまった次第.しくしく…
posted by 茶坊主 at 13:28| Comment(0) | 分子進化

2009年02月20日

カカトアルキのステータス

栃内さんのブログで知ったこの記事

A living fossil found in Namibia: Scientific American

内容は自体は本ブログとは直接関係ないのですが(僕のお師匠さんである Bradley Sinclair が出て来たのもオッと思ったのですが,それもまた関係なし),...a new suborder of carnivorous insects known as Mantophasmatode の記述が気になりました.

この扱いは Engel らによって提唱されたものですが(こちらの過去記事参照),一般的に受け入れられて来たということでしょうか.wikipedia の記述も同様になっています.
posted by 茶坊主 at 14:02| Comment(0) | 下等新翅類

2009年02月13日

幼虫形態の系統情報

Annual Review of Entomology より

Conflict, Convergent Evolution, and the Relative Importance of Immature and Adult Characters in Endopterygote Phylogenetics
Rudolf Meier and Gwynne Shimin Lim
Annual Review of Entomology 2009, 54: 85-104.


内容はまだ読んでないが,Fig. 1 がとても興味深かった.David Hillis(だったと思う:原典がすぐには出てこないので,以下に関しても記憶違いがあるかも)は,1990年代以降の系統論文の急速な増加を,分子系統が身近になったことと関連づけた議論を行った.Fig. 1 は,昆虫の世界では,形態形質情報がいまだに多数派を占めており,さらに論文数も分子系統の増大と並ぶ勢いで増えていることを示している.

追記

上記 Hillis の論文はこれでした.「系統論文の急速な増加を,分子系統が身近になったことと関連づけた議論」というのは記憶違いでした.「系統推定が容易になっただけではなく,系統推定の重要性が広く認知された結果」という論調でした.

Hillis, D. M. 2004. The Tree of Life and the Grand Synthesis of biology. Pages 545-547 in Assembling the Tree of Life (J. Cracraft and M. J. Donoghue, editors). Oxford University Press, New York.
posted by 茶坊主 at 09:49| Comment(0) | 完全変態

ネジレバネレビュー

Annual Review of Entomology よりもう一つ

Host-Parasitoid Associations in Strepsiptera
Jeyaraney Kathirithamby
Ann. Rev. Entomol. 2009, 54: 227-49


目内の分子系統の結果(国際昆虫学会で発表があったようだ)の概要も出されている.
posted by 茶坊主 at 09:41| Comment(0) | 完全変態

2009年01月23日

18S の hyper variable region

Phylogenetic comparison of local length plasticity of the small subunit of nuclear rDNAs among all Hexapoda orders and the impact of hyper-length-variation on alignment
Xie, Q., Tian, X., Qin, Y., Bu, W.
Molecular Phylogenetics and Evolution
volume 50, issue 2, year 2009, pp. 310 - 316


六脚類全オーダーの 18S の二次構造を決定して,hyper variable region の状態を検討した論文.まあ,これまでの18S論文でもさんざん言われて来たことで,もう良いだろうと思いながらぱらぱら眺めていて,ふと気になったのがジュズヒゲムシ.ハサミムシにどっぷりはまり込んでいるし,Suppl. Data 見ると,二次構造の状態も完全に一致している.そんなはずは無いと思って確認してみると…

データの由来は Terry & Whiting が使っている Zorotypus hubbardi.で,部分配列を拾って BLAST かけてみると,引っかかるのは全てハサミムシ.ジュズヒゲの 18S は,僕が取った Z. hubbardi のデータも含め,6つもあるのに全く引っかかってこない…つまりは,このデータは Whiting お得意のコンタミ(もしくは同定ミス)で,この著者たちは運悪くその一つを拾ってしまいました,チャンチャン,ということ.

さらに言えば,Terry & Whiting の結果も,コンタミが強く影響している可能性が高いということです(他に使われている2種は大丈夫).こんなのはアライメントしているときに気づきそうなもんだけど…POY の弊害ですね.
posted by 茶坊主 at 10:03| Comment(0) | 分子進化

2009年01月09日

トンボの翅の基部構造

宣伝もかねて

Ninomiya, T. & Yoshizawa, K. (2009) A revised interpretation of the wing base structure in Odonata. Systematic Entomology (in press).

トンボの翅の基部構造の相同性には,極端に異なる解釈がいくつもあって,非常に議論の多い問題でした.特に松田隆一などは,トンボの翅は,他の有翅昆虫とは異なる起源を持っているとすら結論づけています.

上記論文では,トンボの翅基構造が,他の有翅昆虫と相同な構造であることを,いくつかの証拠に基づき議論しています.

この論文は,第一著者二宮君の修士論文をもとにしたもの.彼は修士論文発表会と昆虫学会の北海道支部会での発表の際,翅の基部構造の立体模型を作って解説するという,伝説のプレゼンテーションを行い,今でも語りぐさとなっています.

posted by 茶坊主 at 10:46| Comment(0) | 旧翅類