2010年05月25日

節足動物レビュー

Of mites and millipedes: Recent progress in resolving the base of the arthropod tree.
Caravas, Jason & Friedrich, Markus (2010)
BioEssays 32: 488-495


節足動物高次系統に関するレビュー.コンパクトに良くまとまっている.Conclusion and prospects には同意.
posted by 茶坊主 at 10:46| Comment(0) | 節足動物

2010年04月09日

POY 叩き

Inference of molecular homology and sequence alignment by direct optimization
Matthew J. Morgan and Scot A. Kelchner
Molecular Phylogenetics and Evolution
Article in Press


Direct optimization に関する哲学的な考察です.

主張の柱は,相同性判定の基準(similarity, conjunction, congruence) のうち,DO は congruence のみに頼ってアライメント(homology の判定)を行うが,分岐図 (congruence 基準)は,形質状態 (character states = synapomorphy) の判定にのみ適用可能で,形質 (character = homology) の判定には適用できない.したがって,congruence に基づいて homology の探索を行う DO の方法論は正当化できない,というもの.

論文に出て来ている例で説明すると,鳥とコウモリの翼は「翼」としては非相同だけど,「前脚」としては相同.そして,鳥とコウモリの翼が独立に進化したということを分岐図に基づいて言うためには,それらが「相同な形質=前脚」の「形質状態」としてコーディングされている必要がある.つまり分岐図は,「形質状態」である翼についてはそれらの由来が異なることを説明できるが,前脚という「形質」そのものの相同性については何も語れない.前脚の相同性を議論するためには,他の判定基準を適用するか,もしくは前脚を「形質状態」としてコーディングしたより包括的な分岐分析が必要になる,と言った感じ.
posted by 茶坊主 at 17:09| Comment(0) | 分子系統

2010年03月15日

完全変態系統

Goodbye Halteria? The thoracic morphology of Endopterygota (Insecta) and its phylogenetic implications
Frank Friedrich and Rolf G. Beutel
Cladistics
Early View (Articles online in advance of print)
Published Online: 12 Mar 2010


胸部形態に基づく完全変態の高次系統.ボイテルくんの十八番.

もはや陳腐な感じのする Goodbye *** 系のタイトルですが,まあタイトル通り,ネジレバネ+双翅類の関係は支持されていません(ネジレバネは甲虫の姉妹群).ほかにも,膜翅類が完全変態の一番基部から分岐している点などは,これまでの形態からは明確には支持されていなかった点で,最近の分子の結果とも良く一致しています.

最節約樹での甲虫+ネジレバネの位置づけは明らかにおかしいですが,一方で Mecopterida の関係を支持する新たな形質も見いだされています.
posted by 茶坊主 at 09:08| Comment(0) | 完全変態

2010年03月11日

跳ねるゴキブリ

しばらくチェックしてませんでしたが,久しぶりに見てみたらArthropod Systematics & Phylogeny の最新号が出てました.大工さんの POY 仕事が出てたりもしますが,一番の注目は Jumping Cockroach! なんてすてきな造形なんだろう.
posted by 茶坊主 at 12:09| Comment(0) | 六脚類

2010年03月08日

Problem in POY: Cladistics で!?!?

A problem in POY tree searches (and its work-around) when some sequences are observed to be absent in some terminals
Jan De Laet
Cladistics (in press)


Cladistics にこのタイトルが載ってるということでかなりビビりましたが,内容としては方法論批判ではなく,missing data と真の deletion を POY が上手く区別できない場合がある,程度の話でした.
posted by 茶坊主 at 15:36| Comment(0) | 分子系統

ウソ?ホント?シラミの多系統性

宣伝もかねて.

Yoshizawa, K., Johnson, K. P. (in press)
How stable is the “Polyphyly of Lice” hypothesis (Insecta: Psocodea)?: A comparison of phylogenetic signal in multiple genes
Molecular Phylogenetics and Evolution


(3/8 現在,DOI がまだ反映されていません.Preprint はこちら

18S の解析で得られたシラミの多系統性を,複数遺伝子(18S, Histone 3, Wingless, 16S, COI) で再検討した論文.複数遺伝子の同時解析により,シラミの多系統性(コナチャタテ科+マルツノハジラミ亜目の姉妹群関係)が高い確率で支持された一方,18S 以外の遺伝子には,この関係を支持する情報がほとんど含まれていないことを示しました.

面白いなと思ったのは,系統情報をほとんど持たない(ランダムデータと有意な違いの無い)COI のデータを 18S に加えて最尤解析することにより,18S 単独で解析した場合より劇的に高いブーツストラップ確率が得られたこと.詳しくは検討してませんが(誰かやりませんか?),おそらく進化傾向の極端に異なる遺伝子を組み合わせたデータに,単一の塩基置換モデルを適用することによってこのようなことが起こり得るようです.PAUP のような,遺伝子ごとに別々のモデルを適用できないソフトで,複数遺伝子の同時解析を行う際には注意すべき問題だと思います.

いずれにしても,今回の論文では,シラミの多系統性に関してはっきりとしたことは言えませんでした.
posted by 茶坊主 at 15:29| Comment(0) | 準新翅類

2010年02月15日

節足動物系統

Arthropod relationships revealed by phylogenomic analysis of nuclear protein-coding sequences
Jerome C. Regier1, Jeffrey W. Shultz1,2,3, Andreas Zwick1, April Hussey1, Bernard Ball4, Regina Wetzer5, Joel W. Martin5 & Clifford W. Cunningham4
Nature advance online publication 10 February 2010 | doi:10.1038/nature08742


いまいちネイチャーンな価値を見いだせないのですが…Yahoo では鋏角類が基部に来たことが強調されていますが,それも別に驚くことでもないし,鋏角類の単系統性も弱いままだし.

個人的には,トビムシ+カマアシが非常に強く支持されていることが収穫かな.
(シロハラさんよりご指摘いただきました.Podura と Protura を読み間違えるなんて,目と頭どちらが悪いんでしょうか?)

あと昆虫の姉妹群が結構強く支持されていることもね.
posted by 茶坊主 at 11:50| Comment(2) | 節足動物

2010年01月06日

【悪霊】POY【退散】

あけましておめでとうございます.年明け早々,論文の改訂や講義があり,毎年恒例のビールブログを書かないままでした.ちなみに,新年一発目は,お約束でタイガービールを飲みました.

さてさて本題ですが,このブログをご覧の方,またバイオディバーシティの僕の書いた章を読んでいただいた方なら,僕が direct optimization という方法論,そしてこの方法論に基づくソフトである POY が大嫌いなことはご存知と思います.POY のパフォーマンスを比較検討した論文はそれなりにありますが,目指すところは「どっちの方がより正確か」と言った比較がほとんどで,その方法論的な問題点を的確に指摘した論文としては

Simmons, M. P. (2004) Independence of alignment and tree search. Molecular Phylogenetics and Evolution, 31, 874-879.

位しか無いんじゃないでしょうか?

今回,POY が決定的に問題のあるソフトであることを指摘した論文がアクセプトされましたので,宣伝もかねて紹介します.
Yoshizawa, K. (2010) Direct optimization overly optimize data. Systematic Entomology (in press).

Preprint はこちら

要点は,POY はアライメントが不確かなどんなデータ領域(完全にランダムなデータや,矛盾する系統情報を含むデータ)からでも,他のしっかりとアライメントされた領域と一致するようなシグナルを抽出してしまうこと.また,アライメントの安定した領域にわずかな系統シグナルしか含まれていない場合,不安定な領域の偶然の一致が増幅され,偽の系統情報が作り出されてしまい,またそうして作り出された人為シグナルの量と質は,アライメントの安定した領域に含まれる本来のシグナルを圧倒してしまう,という点です.論文の図3を見ていただければ一目瞭然と思います.

このブログでも POY から導き出された論文を数多く紹介してきましたが,それらはほとんど artifact と言っていいと思います.



この先はまあ雑談的な内容です.
posted by 茶坊主 at 11:00| Comment(0) | 分子系統