2011年04月06日

恐竜にシラミは寄生していたか?

本題に入る前に.震災,計画停電等で,長時間の系統解析が難しい方,いらっしゃるんじゃないでしょうか?当方,2GHz の Mac 2台(CUP 4つ)が普段開いていますので,データセットと実行コマンドを書いたファイルを送って頂ければ解析します.PAUP と MrBayes の取り扱いには馴れてます.他のソフトでも Mac なら対応します.

さて本題.宣伝もかねて.

シラミの分岐年代を推定した論文です.白亜紀中期頃,つまり恐竜の絶滅のはるか前にシラミが起源,放散していたことを示しました.最近羽毛を持った恐竜の化石もたくさん見つかっており,これらの恐竜におそらくシラミは寄生していただろうと考えられます.

Smith, V.S., Ford, T., Johnson, K.P., Johnson, P.C.D., Yoshizawa, K., Light, J.E.. (2011) Multiple lineages of lice pass through the K-Pg boundary. Biology Letters. doi:10.1098/rsbl.2011.0105.

プレプリントはこちらで配布しています.プレスリリースもあります.第一著者 Vince Smith は,すでにいくつかのメディアからインタビューを受けているようです (New York Times, New Scientist等).

Did dinosaurs have lice?
posted by 茶坊主 at 17:35| Comment(0) | 準新翅類

2010年12月01日

POY 日本語レビュー

POY 問題に関する日本語のレビューを書きました.以下から PDF がダウンロードできます.(2メガくらい)

吉澤和徳 2011.
直接最適化法 direct optimization の問題点
タクサ 30(印刷中)
posted by 茶坊主 at 10:53| Comment(0) | 分子系統

2010年11月19日

昆虫高次系統

もうすぐ授業だけど,メモらないわけにはいかない.

Phylogenetic relationships among insect orders based on three nuclear protein-coding gene sequences
Keisuke Ishiwata, Go Sasaki, Jiro Ogawa, Takashi Miyata and Zhi-Hui Sua
Molecular Phylogenetics and Evolution (in press)


結構解像度高い.完全変態昆虫はこれでほぼ間違いないだろう.ネジレ+鞘翅 (BS, PP 100) も膜翅最基部分岐 (BS 70, PP 100) も強く支持される.もはや完全変態最後の難問は,脈翅系3目間の関係にしぼられた感じ.ネジレが鞘翅に内包される可能性もまだあると思ってたりもするが.

半翅系昆虫はやっぱり難しい.形態で見ると,単系統性に疑いなさそうに見えるんだけど,分子では絶対側系統的になってしまう.この論文でもそうだ.もちろん支持率は低いけど.

直翅系の深い所はやっぱり不明確.Zoraptera, Embiodea, Phasmatodea, Plecoptera といった辺りのサンプリングが不十分な点も一因か.ただ,直翅系全体が単系統になっている点は極めて重要.分子からは初めての支持となる.BS 84, PP 100 と支持率も高い.形態からは,直翅系の単系統性に関して強いサポートはこれまで得られていないが,wing base を見る限り直翅系の単系統は間違いない.Wing base 論文は,4年間も温め続けてきたが(温め過ぎ?),今年中には投稿する(イントロ書き直す必要があるな…).

旧翅類の単系統性はどうだろう?Ephemeroptera があからさまに long branch になってるし.これで納得とは行かないな.

ということで,未解決問題はまだたくさんあるとしても,全体的には良い線行ってると思う.
posted by 茶坊主 at 09:14| Comment(0) | 六脚類

2010年10月08日

ネジレバネ問題未だ終わらず

McKenna DD, Farrell BD, 2010 9-Genes Reinforce the Phylogeny of Holometabola and Yield Alternate Views on the Phylogenetic Placement of Strepsiptera. PLoS ONE 5(7): e11887. doi:10.1371/journal.pone.0011887

注目すべきは,rRNA を含めた解析で,ネジレバネが甲虫の中に入っている点.これは十分ありえると思う.

rRNA を除くとネジレバネは脈翅系の姉妹群に来る.

どちらのデータセットでも,ネジレバネは相変わらず long branch のまま.

ということで,ネジレバネ問題に関しては,まだちゃんとおいしいネタが残ってる.ただし,Neuropteroidea の単系統性は,いずれのデータでも非常に強く支持されており,平均棍類は完全におさらば(rRNA を含めても否定される訳だし).
posted by 茶坊主 at 08:55| Comment(0) | 完全変態

2010年10月05日

完全変態論文つっこみ

こちらの論文について.

・Fig. 3 のグレーのボックスとその中の数字の説明が書いてない.これは,多数決合意樹の%とのこと(第一著者に確認済み)

・翅基構造データのみの解析では,最短樹が10万本以上出てきたと書かれているが,おそらくこれは無翅の昆虫(ユキシリアゲとかノミ)を解析から除外してないのが原因.これらを除外した上で,翅基構造のみで解析すると98本の最短樹が得られる(著者に突っ込み入れるも今の所返答無し).
posted by 茶坊主 at 17:43| Comment(0) | 完全変態

2010年10月02日

完全変態形態系統

Morphological and molecular evidence converge upon a robust phylogeny of the megadiverse Holometabola
Cladistics
Rolf G. Beutel Frank Friedrich Thomas Hörnschemeyer Hans Pohl Frank Hünefeld Felix Beckmann Rudolf Meier Bernhard Misof Michael F. Whiting Lars Vilhelmsen
DOI: 10.1111/j.1096-0031.2010.00338.x


昨年のドレスデンミーティングで既に話は聞いていたが,ようやく論文が出た.成虫幼虫蛹全てのステージから356形質をコードして系統解析を行っている.

結果はだいたい納得できるもの.特に膜翅目が完全変態の最基部から分岐するとする系統樹は,形態に基づくものとしては初めて示されたものじゃないだろうか.結構多くの形質がこれを支持している.

もうひとつのポイントは,ネジレバネ+甲虫.ただし,こちらをサポートする形質は弱く,特に獲得形質が見られない(退化形質からの支持のみ).翅の基部からの支持も全く得られていない.

明らかにおかしい点は,ネジレバネ+甲虫が,長翅系昆虫の中にどっぷり入っている点.著者らは,ネジレバネの極端な特殊化が原因であろうとしている.

個人的にムムッと思ったのが,パーツごとの系統情報を検討した FIg. 3.翅の基部に含まれるホモプラシーが非常に多いということを示している.ただ,コードされた形質を見てみると (Appendix 3),明らかに見方が甘いし,無理して量的な形質なんかもとりすぎてる印象.もっといい質的な違いがあちこちありますって.ちなみに直翅系昆虫の解析では,RI=0.8 以上をたたき出している.

先日,Olympus SZX16 を(中古品を新品の半額以下で.自腹を切って…いたたたた)入手した.もちろん最大の目的は翅の基部構造のより詳細な検討.入手して一番最初に見たのはネジレバネとジョウカイボンの翅の基部.ほんとよく見える.前々から,翅の基部はネジレバネと甲虫で似てるとは思っていたけど,いい顕微鏡で見てみると今までちょっとあいまいだったところがかなりクリアになってきた.来年3月くらいから,ネジレバネプロジェクトを共同研究として本格的に進める予定なので,今から楽しみ.そういう意味でも,この論文は色々示唆に富んで面白かった.
posted by 茶坊主 at 15:12| Comment(0) | 完全変態

2010年07月28日

2010年07月05日

ヒトジラミゲノム

シラミ学会に合わせるかのようにヒトジラミのゲノム論文が出ました.学会でも,プロジェクトを主導した Barry がアツく語ってました.

学会終了後,フィールドワークその他で今日まで紹介する機会を逸していました.三浦さんのブログで紹介されていますので,こちらをご覧ください.追加ポイントとしては,ミトコンドリア一本鎖結合蛋白を欠くこと.シラミのミトコンのへんちくりんな進化傾向を理解する上で重要な発見になりそうです.

posted by 茶坊主 at 17:04| Comment(0) | 準新翅類