Paraneoptera と Acercaria

昨日の記事に関連して、上の二つの用語についても書いておこうと思います.ちなみに僕は、準新翅類 Paraneoptera を用いていて、Acercaria は用いていません.

かつての用法では、Paraneoptera=ジュズヒゲ+Acercaria でした.現在では、ジュズヒゲが直翅系昆虫であることはほぼ間違いないと言われるまでになりましたので、Paraneoptera = Acercaria と言うことになってしまいました.Paraneoptera にはもともとジュズヒゲも含まれていましたから、それを含まないグループであることを明確に示したい人たちによって、Acercaria という名称が使われています.ま,妥当ですね.

一方、Paraneoptera という用語は、元々,新翅類を大きく3つのグループに分類する際の名称として提唱された物です (Polyneoptera, Paraneoptera, Oligoneoptera).で,確かに Paraneoptera の中身は変わってはいますが、新翅類の3大グループの一つと言う位置づけは変わっていません(Polyneoptera の中身だって変わってます).それに対して Acercaria は,大グループ内の一分類群に与えられた名称です.ですから,新翅類の一つ下位の分類群の名称と意味では、Polyneoptera, Paraneoptera, Oligoneoptera (=Endopterygota, Holometabora) の利用が妥当とも言えます.で,僕はこちらを採用したわけです.

まあ命名規約も関係ない名前の話なので、どうでも良いっちゃぁ良いんですが、2001年に wing base の論文で Paraneoptera を使うように決め,現在でも使い続けているのは以上のような経緯です.
posted by 茶坊主 at 10:26| Comment(0) | 準新翅類

2011年12月13日

Acercaria と Ellipura

上記のグループの和名に大きな間違いを犯していました.

バイオディバーシティシリーズ p. 306 では、Ellipura を無尾角類と言う和名で呼びましたが、この和名は石川の昆虫の誕生中で Acercaria の和名として利用されています(山崎の動物系統分類学中では無角類となっていますがプライオリティは石川の用法にあるでしょう).Ellipura もその特徴の一つに尾角の消失があるため、変に脳内変換され使ってしまった物と思われます.Ellipura には,尾欠類(山崎, 2000)または欠尾類(町田, 2001が調べた限り一番古い)が当てられています.欠尾類のより古い利用例もあるかもしれません.

ということで,以下の通り訂正いたします.済みませんでした.問題提起頂いた筑波大の真下くんにお礼申し上げます.

Ellipura: 尾欠類 or 欠尾類(= Parainsecta: 側昆虫類)
Acercaria: 無尾角類(≒Paraneoptera: 準新翅類)

ちなみに、チャタテ,シラミ、半翅,アザミウマで構成されている単系統群には,Paraneoptera が一般的に当てられていますが、厳密には Paraneoptera のもともとの用法ではジュズヒゲもこの中に含まれていたので、そこら辺をはっきりさせたい人たち(主にドイツ人)は Acercaria を用いています.
posted by 茶坊主 at 15:42| Comment(0) | 訂正・バイオディバーシティ

2011年09月01日

ツノゼミ ありえない誤り

またまた一ヶ月ぶり以上の更新です.5月30日に予告していたツノゼミ論文の問題点の指摘の件,ようやく論文がアクセプトされました.プレプリントは以下のリンクから.

Yoshizawa, K. (in press)
Treehopper's helmet is not homologous with wings (Hemiptera: Membracidae)
Systematic Entomology


中胸の一部を前胸と勘違いしちゃったり,切片も斜めに切っていたりで,形態の解釈も発生の解釈もはっきり言って正しい所が何一つ無い事を徹底的に指摘しました.

この論文はもともと,nature の brief communication arising に投稿しました.字数制限 (600 words + 図1枚) もあり,上記の論文で言えば,published data と conclusion の一部のみの内容で.一応,ちゃんとレフェリーにまで回りはしたのですが(レフェリーに回っただけで I'm please to inform you that... メールが届いた),結局リジェクト.エディタに文句のメールも書いたのですが,結局僕の言い分の正しさは認めてもらいつつも,「一般読者にウケる内容ではないから,反論は別の所でやって」と言う返事でした.自分の所のジャーナルで間違いだらけの論文を載せても,それを訂正するかどうかは,結局ウケるかどうかが基準なんですね.商業誌と言うのはこういうものだとよくわかりました.

で,Systematic Entomology になっちゃったわけですが,今度は字数制限も無いので,きちんと標本も見た上で(越川さん,感謝),helmet-wing 仮説をほぼ完膚なきまでに成敗する事が出来ました.嫌みっぽい締め方も出来たし.業績リストのインパクトで言えば残念な結果でしたが,きちんとした反論論文を書くと言う意味では,良い結果になったとは思います.
posted by 茶坊主 at 13:00| Comment(2) | 準新翅類

2011年05月31日

新目 Nakridletia

著者から PDF を送ってもらいました.

Vransky, P., Ren, D., and Shih, C. 2010.
Nakridletia ord. n. - enigmatic insect parasites support sociality and endothermy of pterosaurs.
AMBA Projekty 8(1): 1-16.

Google で検索しても著者の業績リストくらいしか引っかからない謎のジャーナルです.新目とされているのは,Evolution of the Insects の Fig. 12.6 に出ている,寄生性の長翅類とされる化石昆虫 (Strashila incredibilis) と,中国から見つかった2新種です.EotI に出ている写真では,腹部各節に lobe 状の突起が見られますが,中国産のそれは鰓のような構造になっています.プテロサウルスの寄生性と書かれていますが,むしろ水生昆虫のような感じを受けます.

謎のジャーナルらしく,論文の中身はひどいもので,ディスカッションなど論理があっちこっち飛んで頭痛くなりますが,奇妙な昆虫化石の写真は目の保養になります.上記ジャーナル名でググると著者の業績リストがトップでヒットするので,見たい人は問い合わせては?
posted by 茶坊主 at 08:45| Comment(0) | 完全変態

2011年05月30日

直翅系昆虫は単系統群

もう5月も終わり.月初めは,ツノゼミ論文,あちこちで盛り上がりましたが,これについても(ブログの主題と外れますが)そのうち書こうと思っています.相同性の判断ミスと,切片標本の作成の問題が明らかで,形態的にも発生的にも論文の主張は支持されません.

さて宣伝もかねて,こちらはブログの主題に沿ったネタ.

Yoshizawa, K. (in press)
Monophyletic Polyneoptera recovered by wing base structure
Systematic Entomology


直翅系昆虫の系統関係を,翅基構造から取ったデータで解析しました.直翅系昆虫が単系統群かどうかは非常に議論があり,多くの研究で単系統性に疑問が示されています.分子でもほとんどの研究で直翅系昆虫は側系統的になっており,単系統性を支持する研究は,Ishiwata et al. (2011) くらいです.

今回の研究の結果,直翅系昆虫の単系統性をかなりはっきり支持する形質が見つかりました.

●humeral plate の背面側がほぼ完全に膜質化する (ci, ri=1)
●median notal wing process - 1Ax が互いに接するような形で関節する (ci=0.5, ri=0.8)
●1Ax 基部後方が後ろに長く突出する (ci, ri=1)

Evolution of the insects でも直翅系昆虫は単系統として示されていますが,それを支持する形質はいくつかのグループで消失しています.一方,たとえば humeral plate の状態は極めて顕著で,有翅の全てのグループではっきり見ることができます.Beutel & Gorb (2006) からデータを拝借し,無翅のオーダーも含めた解析もしていますが,それでも単系統性は支持されます.

その他,Zoraptera + Embiodea, Orthoptera + Phasmatodea, Dictyoptera の単系統性が支持され,wing base のみの解析では Plecoptera + Dermaptera が支持されています.ここら辺は若干結果も不安定ですし,また他の分子や形態の結果とも矛盾する部分もありますので,今後の宿題と言えるでしょう.
posted by 茶坊主 at 09:21| Comment(0) | 下等新翅類