2008年03月24日

ネジレバネレビュー

Pohl, H., Beutel, R. G. (in press)
The evolution of Strepsiptera (Hexapoda)
Zoology (Jena)


ネジレバネの進化に関する包括的なレビュー.形質状態や寄生様式の進化系列に関する仮説も提唱されている.Supplementary material として,一齢幼虫が放出される様子の動画もある.
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2008年03月18日

ユキシリアゲの頭部形態

Beutel, R. G., Friedrich, F., Whiting, . F. (in press) Head morphology of Caurinus (Boreidae, Mecoptera) and its phylogenetic implications. Arthropod Structure & Development.

ノミ Siphonaptera がユキシリアゲ科 Boreidae の姉妹群であること,すなわち長翅目 Mecoptera が側系統群であることは,18S の解析によって強く示されています.ぼく自身,初めて Boreidae の標本を見た時,変なノミだなぁ,と思ったくらいなので,感覚的には納得できる結果でした.ただ,これを支持する形態形質ははっきりしたものは見つかっていません.

上記論文では,オレゴンにしかいない Boreidae の一種, Caurinus dectes というシリアゲムシ(というか何と言うか,超へんちくりんなノミの出来損ないのような虫です)の頭部形態を,Beutel らしく微に入り細に入り調べています.結論から言うと,Mecoptera + Siphonaptera を支持するかもしれない形質が筋肉相で一つ見つかっているものの,Boreidae + Siphonaptera を支持するような形質は見つかっていません.ノミの頭部があまりにも特殊化しているためだろうと結論づけています.

論文の内容云々に加え,Caurinus の珍奇な外観が見れたのも大きな収穫でした.
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2007年01月22日

ありんこ系統その2

PNAS はありんこがお好きなようで.

Evaluating alternative hypotheses for the early evolution and diversification of ants
Sea´n G. Brady, Ted R. Schultz, Brian L. Fisher, and Philip S. Ward
doi:10.1073/pnas.0605858103 2006;103;18172-18177; originally published online Nov 1, 2006; PNAS


Charting uncertainty about ant origins
Ross H. Crozier
doi:10.1073/pnas.0608880103 2006;103;18029-18030; originally published online Nov 20, 2006; PNAS


下の論文は上の論文のレビューです.

"We generated the largest ant molecular phylogenetic data set published to date" なんてアブストに書いてあるのを読んで,また量で勝負のごり押し論文かぁ,と思ったのですが,この論文は結構好感度高かったです.外群の影響をきちんと検討しているから.

外群を解析に加えることの悪影響として,系統的に遠い仲間を加えることでノイズが増えることや,外群が long branch attraction を引き起こすことなどがあげられるでしょう.

外群による long branch attraction の影響については,あまり気にかけていない論文が多いように思います.内群に比べてサンプリングが粗だったり,またそもそも外群んと内群の分岐が深かったりが原因となって,多くの場合,内群分岐点と外群分岐点の間は long branch となります.そのため,内群にサンプリングが粗なグループ(1属1種とか)や進化速度の加速したグループがあると,それと外群が引き寄せ合って,誤ったところに根がついちゃう恐れが高いわけです.

今回のありんこ系統樹でも,ベストな樹ではムカシアリ Leptanilinae が最基部から分岐しているようになっていますが,樹長を見るとlong branch の影響が強く疑われます.実際,著者らは9ヶ所の根の位置を検討していますが,そのうち5ヶ所ではベストな樹と有意差がありません.また外群を加えた解析と取り除いた解析では,内群の分岐関係も変わって来ます.

ということで,結局アリの系統ということではもやもやの残る論文ではありますが,いい加減な結果を強く主張する論文に比べると,非常にすっきりとした読後感となっています.
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2006年10月30日

膜翅類の系統的位置

完全変態昆虫の高次系統最大の問題と言えば,ご存知ネジレバネ問題な訳ですが,それに次ぐ問題が,実は膜翅類の系統的位置です.一般的には長翅節(鱗翅目,毛翅目,長翅目,隠翅目,双翅目からなる単系統群)に近いと考えられてはいますが,その根拠は希薄です.分子データでも,完全変態類の最深部の解像度は低いままでした.

ゲノムプロジェクトの成果を利用した系統解析が行われ,膜翅類が完全変態昆虫の最基部から分岐したとする結果が得られています.

Phylogenomic analysis reveals bees and wasps (Hymenoptera) at the base of the radiation of Holometabolous insects.

Genome Res. 2006 Oct 25;

Authors: Savard J, Tautz D, Richards S, Weinstock GM, Gibbs RA, Werren JH, Tettelin H, Lercher MJ


185遺伝領域を使った解析で,結構いろいろねちねちと検定もしており,結果は頑強だと主張しています.

で,ぼくの感想はというと,毎度お決まりの,「これっぽっちのタクソンサンプリングじゃぁねぇ...」それに加えて,枝の長さなどを見ると,やっぱりこりゃおかしいよ,ってな感じの結果だと思います.末端の枝の長さに比べ,内部の分岐点間が長過ぎます.どんな遺伝領域を解析したのかは分かりませんが(online supplement がまだ公開されていない),ノイズが拾われまくってるんじゃないかと思います.
posted by 茶坊主 at 09:34| Comment(0) | 完全変態

2006年10月11日

森と水辺の甲虫誌

結局北大生協では入手できず,札幌駅前紀伊国屋書店でゲット.北大生協逝って良し.

とりあえず総論となる1章とコラムをぱらぱら.総論は新鮮な文献もきちんと引用してある.これだけの新鮮かつ網羅的な情報が日本語で読めるというのは,初学者やぼくのような専門外(本当は甲虫学を目指していたのに...)の人間にはありがたい限り.

期待していたネジレバネコラムは,さっと流している程度.とはいえ,この問題に関してこれまでの日本語解説は動物系統分類学 追補版のものだけで,その中で「今や分子データからこれら両目(双翅目と撚翅目)の姉妹関係はほぼ明らかにされたといってよいであろう」などというとんでもない解説がなされているのに比べると,ネジレバネ問題の問題(?)に関して初めて日本語で紹介されたということで,その意義は高いとおもう.(バイオディバーシティがきちんと出版されていれば...)

DNA 解析と分類学のコラムは,残念ながら読んでいて気持ち悪い.これは著者の責任というより,phylogeny, taxonomy, systematics, phylogenetic systematics, phylogenetic taxonomy と言った用語と日本語との対応がしばしば不適切なことや,分類学と系統学の違いに関する混乱にも由来しているとおもう.「系統分類学」って良く言うけど,これを phylogenetic taxonomy と思ったりすると大変なことになりますよ.

狭い意味での分類学とDNAの関わりと言えば,バーコーディングにつきる訳ですが,これに関しては項を改めて.(って,あとから書いた記事の方が上にくるんだけど)
posted by 茶坊主 at 16:44| Comment(0) | 完全変態

2006年07月04日

ネジレバネの頭

べーちぇる&ぽーるコンビによる頭部の形態学的研究.まだ読み込んではいないが,J. Molphol. に乗るだけあって,かなり詳細な研究.目内部の系統関係に注目しているが,いくつかの形質の再解釈や ground plan の推定も行っているので,目間の系統にも影響しうるか?

Head structures of males of Strepsiptera (Hexapoda) with emphasis on basal splitting events within the order.

J Morphol. 2006 May;267(5):536-54

Beutel RG, Pohl H


この調子だと,wing base もやられちゃうかな.ぼく自身のある程度の見通しはあるんだけど,材料が集まらなくて,しばらくは論文にまではできそうにない.
posted by 茶坊主 at 09:36| Comment(0) | 完全変態

ネジレバネゲノム

ネジレバネのミトコン全周の解析.シラミやアザミウマに見られるような大規模な再配置は見つかっていない.

The mitochondrial genome of the entomophagous endoparasite Xenos vesparum (Insecta: Strepsiptera).

Gene. 2006 Apr 28;

Carapelli A, Vannini L, Nardi F, Boore JL, Beani L, Dallai R, Frati F
posted by 茶坊主 at 09:27| Comment(0) | 完全変態

2006年06月09日

ネジレバネ問題

先を越されてしまった...

Bonneton, F., Brunet, F. G., Kathirithamby, J. & Laudet, V. (2006)
The rapid divergence of the ecdysone receptor is a synapomorphy for Mecopterida that clarifies the Strepsiptera problem.
Insect Molecular Biology 15 (3), 351-362.


詳しくは g-hop さんのページ参照.

まあ予想通り,Mecopterida からはじき出されている.ただ,使った領域の進化速度が Mecopterida で加速しているので,long branch attraction の影響も考慮する必要はあるだろう.あと,一応甲虫に近そうな位置づけにはなっているが,支持は弱く,まだこれで解決 (clarify) とは行かないとおもう.

なお,形態から見る限り,甲虫で間違いないと思う.材料が揃ったら論文にしたいと思っているので,詳細は秘密.
posted by 茶坊主 at 14:35| Comment(0) | 完全変態

2006年05月01日

完全変態昆虫高次系統

Kotrba, M. & Burckhardt, D. (2005) Cum grano salis - die neuen Hypothesen zur Insektenphylogenie. NachrBl. bayer. Ent. 54: 88-94.

Whiting らの分子系統の批判論文.本文はドイツ語なので読む気は起きないが,アブストラクトで思わず吹き出した.

Abstract
We critically review the phylogenetic hypothesis of holometabolan relationships based on 18S rDNA sequence data by Whiting (2002) and its discussion by Haszprunar (2004). We point out the problem of publishing weakly supported hypotheses, which often subsequently are cited as more or less well corroborated relationships and, as such, are taken for the generally accepted view.

なかなか面白そうじゃない.本文も英語で書いてもらいたかった...
posted by 茶坊主 at 14:04| Comment(0) | 完全変態

2006年04月17日

アリの系統

バイオディバーシティで対象としたような高次系統(目間とか),には当てはまらないけど,これは外せないでしょ.

Science. 2006 Apr 7;312(5770):101-4.

Phylogeny of the ants: diversification in the age of angiosperms.
Moreau CS, Bell CD, Vila R, Archibald SB, Pierce NE.


4500 bp, 139 otu ということで,まあ結構な大系統樹です.やっぱり深いところの解像度はかなり低い.COI みたいな進化速度爆速変異飽和しまくりなデータが入ってたり,rDNA のインデルだらけ領域を Clustal でアライメントしたりと,多分データ自体が結構ノイジーと思われる.そこら辺を取り除いてどの程度改善するのかは気になるところだが,まあ解析し直しても,深いところの解像度はせいぜい多分こんなもんなんでしょう.アリ系統の決定版というにはほど遠いと思われるが,かといってここら辺をきちんと解こうと思うときっと超大変なはず.

ぼく自身,どうもありんこというか膜翅類全体的にあまり詳しくない(あまり好きなムシでもない)ので,これ以上結果の評価はできませんが.
posted by 茶坊主 at 14:43| Comment(0) | 完全変態

2006年04月14日

完全変態昆虫の高次系統(レビュー)

Beutel, Rolf G. & Pohl, Hans (2006) Endopterygote systematics − where do we stand and what is the goal (Hexapoda, Arthropoda)?. Systematic Entomology 31 (2), 202-219.

ぶろぐなるものを書き始めたしょっぱなから大物が釣れた.昨日公開になってたようだ.

結構取りこぼしてた論文もあるけど,今更直せないしなぁ.まあそのためにこんなもん書き始めたわけだし.ぼちぼち紹介して行きます.

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posted by 茶坊主 at 10:57| Comment(0) | 完全変態