2011年05月31日

新目 Nakridletia

著者から PDF を送ってもらいました.

Vransky, P., Ren, D., and Shih, C. 2010.
Nakridletia ord. n. - enigmatic insect parasites support sociality and endothermy of pterosaurs.
AMBA Projekty 8(1): 1-16.

Google で検索しても著者の業績リストくらいしか引っかからない謎のジャーナルです.新目とされているのは,Evolution of the Insects の Fig. 12.6 に出ている,寄生性の長翅類とされる化石昆虫 (Strashila incredibilis) と,中国から見つかった2新種です.EotI に出ている写真では,腹部各節に lobe 状の突起が見られますが,中国産のそれは鰓のような構造になっています.プテロサウルスの寄生性と書かれていますが,むしろ水生昆虫のような感じを受けます.

謎のジャーナルらしく,論文の中身はひどいもので,ディスカッションなど論理があっちこっち飛んで頭痛くなりますが,奇妙な昆虫化石の写真は目の保養になります.上記ジャーナル名でググると著者の業績リストがトップでヒットするので,見たい人は問い合わせては?
posted by 茶坊主 at 08:45| Comment(0) | 完全変態

2010年10月08日

ネジレバネ問題未だ終わらず

McKenna DD, Farrell BD, 2010 9-Genes Reinforce the Phylogeny of Holometabola and Yield Alternate Views on the Phylogenetic Placement of Strepsiptera. PLoS ONE 5(7): e11887. doi:10.1371/journal.pone.0011887

注目すべきは,rRNA を含めた解析で,ネジレバネが甲虫の中に入っている点.これは十分ありえると思う.

rRNA を除くとネジレバネは脈翅系の姉妹群に来る.

どちらのデータセットでも,ネジレバネは相変わらず long branch のまま.

ということで,ネジレバネ問題に関しては,まだちゃんとおいしいネタが残ってる.ただし,Neuropteroidea の単系統性は,いずれのデータでも非常に強く支持されており,平均棍類は完全におさらば(rRNA を含めても否定される訳だし).
posted by 茶坊主 at 08:55| Comment(0) | 完全変態

2010年10月05日

完全変態論文つっこみ

こちらの論文について.

・Fig. 3 のグレーのボックスとその中の数字の説明が書いてない.これは,多数決合意樹の%とのこと(第一著者に確認済み)

・翅基構造データのみの解析では,最短樹が10万本以上出てきたと書かれているが,おそらくこれは無翅の昆虫(ユキシリアゲとかノミ)を解析から除外してないのが原因.これらを除外した上で,翅基構造のみで解析すると98本の最短樹が得られる(著者に突っ込み入れるも今の所返答無し).
posted by 茶坊主 at 17:43| Comment(0) | 完全変態

2010年10月02日

完全変態形態系統

Morphological and molecular evidence converge upon a robust phylogeny of the megadiverse Holometabola
Cladistics
Rolf G. Beutel Frank Friedrich Thomas Hörnschemeyer Hans Pohl Frank Hünefeld Felix Beckmann Rudolf Meier Bernhard Misof Michael F. Whiting Lars Vilhelmsen
DOI: 10.1111/j.1096-0031.2010.00338.x


昨年のドレスデンミーティングで既に話は聞いていたが,ようやく論文が出た.成虫幼虫蛹全てのステージから356形質をコードして系統解析を行っている.

結果はだいたい納得できるもの.特に膜翅目が完全変態の最基部から分岐するとする系統樹は,形態に基づくものとしては初めて示されたものじゃないだろうか.結構多くの形質がこれを支持している.

もうひとつのポイントは,ネジレバネ+甲虫.ただし,こちらをサポートする形質は弱く,特に獲得形質が見られない(退化形質からの支持のみ).翅の基部からの支持も全く得られていない.

明らかにおかしい点は,ネジレバネ+甲虫が,長翅系昆虫の中にどっぷり入っている点.著者らは,ネジレバネの極端な特殊化が原因であろうとしている.

個人的にムムッと思ったのが,パーツごとの系統情報を検討した FIg. 3.翅の基部に含まれるホモプラシーが非常に多いということを示している.ただ,コードされた形質を見てみると (Appendix 3),明らかに見方が甘いし,無理して量的な形質なんかもとりすぎてる印象.もっといい質的な違いがあちこちありますって.ちなみに直翅系昆虫の解析では,RI=0.8 以上をたたき出している.

先日,Olympus SZX16 を(中古品を新品の半額以下で.自腹を切って…いたたたた)入手した.もちろん最大の目的は翅の基部構造のより詳細な検討.入手して一番最初に見たのはネジレバネとジョウカイボンの翅の基部.ほんとよく見える.前々から,翅の基部はネジレバネと甲虫で似てるとは思っていたけど,いい顕微鏡で見てみると今までちょっとあいまいだったところがかなりクリアになってきた.来年3月くらいから,ネジレバネプロジェクトを共同研究として本格的に進める予定なので,今から楽しみ.そういう意味でも,この論文は色々示唆に富んで面白かった.
posted by 茶坊主 at 15:12| Comment(0) | 完全変態

2010年03月15日

完全変態系統

Goodbye Halteria? The thoracic morphology of Endopterygota (Insecta) and its phylogenetic implications
Frank Friedrich and Rolf G. Beutel
Cladistics
Early View (Articles online in advance of print)
Published Online: 12 Mar 2010


胸部形態に基づく完全変態の高次系統.ボイテルくんの十八番.

もはや陳腐な感じのする Goodbye *** 系のタイトルですが,まあタイトル通り,ネジレバネ+双翅類の関係は支持されていません(ネジレバネは甲虫の姉妹群).ほかにも,膜翅類が完全変態の一番基部から分岐している点などは,これまでの形態からは明確には支持されていなかった点で,最近の分子の結果とも良く一致しています.

最節約樹での甲虫+ネジレバネの位置づけは明らかにおかしいですが,一方で Mecopterida の関係を支持する新たな形質も見いだされています.
posted by 茶坊主 at 09:08| Comment(0) | 完全変態

2009年06月29日

完全変態系統

まだ読み込んでないが,なかなか良さげな論文.

Single-copy nuclear genes resolve the phylogeny of the holometabolous insects
Brian M Wiegmann, Michelle D Trautwein, Jung-Wook Kim, Brian K Cassel, Matthew A Bertone, Shaun L Winterton and David K Yeates
BMC Biology 2009, 7:34


核のアミノ酸コード領域6遺伝子,5000bp ほどのデータ.一番の注目,ネジレバネは甲虫の姉妹群(まーそうでしょう.PP 99%, BS 59% とあまり高くはないし,long branch になってはいるが.ただし,脈翅ー鞘翅ーネジレの単系統性は PP 100, BS 89 と高い).膜翅目は完全変態の最基部から分岐.あとユキシリアゲーノミの単系統性を否定(これはちょっと意外!!).

全体的に非常に納得いく結果.3rd codon 除いたり,いろいろと検定しているが,かなり結果は安定している.
posted by 茶坊主 at 14:17| Comment(2) | 完全変態

2009年05月15日

脈翅類 mt-genome その2

先日の Cameron 論文に続き,脈翅類3目のミトゲノムが公開されました.

Insect mitochondrial genomics 3: the complete mitochondrial genome sequences of representatives from two neuropteroid orders: a dobsonfly (order Megaloptera) and a giant lacewing and an owlfly (order Neuroptera).
Beckenbach AT, Stewart JB.
Genome. 2009 Jan;52(1):31-8.


系統解析などはやってませんが,Cameron 論文で使われてるサンプルと比較的系統的にも離れたグループが含まれていますから,あわせて解析するとより安定した結果が得られるでしょう.

脈翅目の一部のグループに,tRNA の配置転換が見つかってますが,脈翅ー広翅ーラクダムシ3者間の関係解明に役立つようなものは見いだされていません.
posted by 茶坊主 at 09:38| Comment(0) | 完全変態

2009年04月09日

脈翅類の mt-phylogenomics

昨日2ヶ月ぶりに更新したと思ったら,今度は2日連続の更新.

A mitochondrial genome phylogeny of the Neuropterida (lace-wings, alderflies and snakeflies) and their relationship to the other holometabolous insect orders
Stephen L. Cameron, Jaron Sullivan, Hojun Song, Kelly B. Miller & Michael F. Whiting
Zoologica Scripta
Published Online: 7 Apr 2009


ラクダムシ,広翅,脈翅からそれぞれ1サンプルずつで,まあとりあえずやってみました的な感じですが,脈翅節+鞘翅節と広翅+脈翅の関係はそれなりに強く支持されている.せめて各目もう一種くらい欲しいね.
posted by 茶坊主 at 09:53| Comment(0) | 完全変態

2009年02月13日

幼虫形態の系統情報

Annual Review of Entomology より

Conflict, Convergent Evolution, and the Relative Importance of Immature and Adult Characters in Endopterygote Phylogenetics
Rudolf Meier and Gwynne Shimin Lim
Annual Review of Entomology 2009, 54: 85-104.


内容はまだ読んでないが,Fig. 1 がとても興味深かった.David Hillis(だったと思う:原典がすぐには出てこないので,以下に関しても記憶違いがあるかも)は,1990年代以降の系統論文の急速な増加を,分子系統が身近になったことと関連づけた議論を行った.Fig. 1 は,昆虫の世界では,形態形質情報がいまだに多数派を占めており,さらに論文数も分子系統の増大と並ぶ勢いで増えていることを示している.

追記

上記 Hillis の論文はこれでした.「系統論文の急速な増加を,分子系統が身近になったことと関連づけた議論」というのは記憶違いでした.「系統推定が容易になっただけではなく,系統推定の重要性が広く認知された結果」という論調でした.

Hillis, D. M. 2004. The Tree of Life and the Grand Synthesis of biology. Pages 545-547 in Assembling the Tree of Life (J. Cracraft and M. J. Donoghue, editors). Oxford University Press, New York.
posted by 茶坊主 at 09:49| Comment(0) | 完全変態

ネジレバネレビュー

Annual Review of Entomology よりもう一つ

Host-Parasitoid Associations in Strepsiptera
Jeyaraney Kathirithamby
Ann. Rev. Entomol. 2009, 54: 227-49


目内の分子系統の結果(国際昆虫学会で発表があったようだ)の概要も出されている.
posted by 茶坊主 at 09:41| Comment(0) | 完全変態

2008年09月19日

1.2億年前の「新種」アリ発見

タイトルはロイターの記事.この記事を読む限り,何のことかさっぱり分からない.

元論文はこちら.高々科レベルの系統なので,最初取り上げる気はなかったんだけど,考えてみたら前にもアリ系統の話を載せてたので一応.

Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Sep 15. [Epub ahead of print]
Newly discovered sister lineage sheds light on early ant evolution.
Rabeling C, Brown JM, Verhaagh M.


著者達は LBA では無いと言い張っているけど,かなりそれっぽい感じ.実際,根の位置を変えても,SH-test では有意な差はでていない.パラメトリックブートストラップ解析の必要があるのでは.
posted by 茶坊主 at 10:09| Comment(0) | 完全変態

2008年09月08日

膜翅目の位置

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

Near Intron Positions Are Reliable Phylogenetic Markers: An Application to Holometabolous Insects

Veiko Krauss*, Christian Thümmler*, Franziska Georgi*, Jörg Lehmann, Peter F. Stadler, and Carina Eisenhardt*

Molecular Biology and Evolution 2008 25(5):821-830


前にも書いた通り,ぼくは塩基配列を使った昆虫の高次系統推定はほぼ袋小路に入ったと感じていて,SINE のようなマーカーの探索が絶対必要と思っていました.

上記論文では,ゲノムプロジェクトの終了した昆虫を末端分類群として,イントロンのデータを用いた完全変態昆虫の系統推定を試みています.特に注目すべきは膜翅目の系統的位置付けで,完全変態群の最基部から分岐したとする結果が,22のイントロンによって支持されています.結果的には,phylogenomic 解析からの結果を支持しています.

もちろん,まだまだ分類群が少なく,また多少のホモプラシーも認められており,これで決まり!とはならないでしょうけど,膜翅目最基部仮説へのかなり強力なサポートとなるでしょう.(ちなみに wing base からも最基部仮説を支持する形質状態を見つけています.分子データを支持するような形態の論文を書くと,いぢわるなレフェリーから「分子系統を支持する形態を探したんぢゃないの?」などと言われることがしばしばなので,このような論文が出る前にモノにしたかったんですが…)
posted by 茶坊主 at 10:05| Comment(2) | 完全変態

2008年08月28日

Nannochoristidae

A longstanding entomological problem finally solved? Head morphology of Nannochorista (Mecoptera, Insecta) and possible phylogenetic implications
R. G. Beutel and E. Baum
Journal of Zoological Systematics and Evolutionary Research


Beutel くんお得意の,頭部形態に基づく Nannochoristidae の系統的位置付けの議論.現在ではあまり受け入れられていない (ノミ (Nannochoristidae, 双翅類)) の関係が支持されている.Nannochoristidae を含む Mecoptera の固有派生形質に関する議論もされており,その多くに対して否定的な結果が出されている.ただ,今回観察された形質についても,Nannochoristidae + Dipstera を強く支持するものとは思えない.

ちなみに,イントロは Nannochoristidae is ... で始まっているが,これは本来 Nannochoristidae are ... または The family Nannochoristidae is ... とすべきもの.
posted by 茶坊主 at 10:54| Comment(0) | 完全変態

2008年07月14日

ノミの系統

Whiting ラボのアクティビティ,最近下がっているような…そんな中久しぶりにボスがファーストの論文が出てます.


A molecular phylogeny of fleas (Insecta: Siphonaptera): origins and host associations
Michael F. Whiting, Alison S. Whiting, Michael W. Hastriter and Katharina Dittmar
Cladistics (online early)


P○Y とか C○II とか(伏せ字になってない!)相変わらず気に食わない所は多々あるのですが,それは置いておいて内容はというと,結局深い分岐は,アライメントパラメータに強く依存し,信頼できる結果は得られていません.work is currently underway to generate a more extensive molecular data matrix との事ですので,ま,次の結果を待ちましょう.
posted by 茶坊主 at 10:50| Comment(0) | 完全変態