2011年05月30日

直翅系昆虫は単系統群

もう5月も終わり.月初めは,ツノゼミ論文,あちこちで盛り上がりましたが,これについても(ブログの主題と外れますが)そのうち書こうと思っています.相同性の判断ミスと,切片標本の作成の問題が明らかで,形態的にも発生的にも論文の主張は支持されません.

さて宣伝もかねて,こちらはブログの主題に沿ったネタ.

Yoshizawa, K. (in press)
Monophyletic Polyneoptera recovered by wing base structure
Systematic Entomology


直翅系昆虫の系統関係を,翅基構造から取ったデータで解析しました.直翅系昆虫が単系統群かどうかは非常に議論があり,多くの研究で単系統性に疑問が示されています.分子でもほとんどの研究で直翅系昆虫は側系統的になっており,単系統性を支持する研究は,Ishiwata et al. (2011) くらいです.

今回の研究の結果,直翅系昆虫の単系統性をかなりはっきり支持する形質が見つかりました.

●humeral plate の背面側がほぼ完全に膜質化する (ci, ri=1)
●median notal wing process - 1Ax が互いに接するような形で関節する (ci=0.5, ri=0.8)
●1Ax 基部後方が後ろに長く突出する (ci, ri=1)

Evolution of the insects でも直翅系昆虫は単系統として示されていますが,それを支持する形質はいくつかのグループで消失しています.一方,たとえば humeral plate の状態は極めて顕著で,有翅の全てのグループではっきり見ることができます.Beutel & Gorb (2006) からデータを拝借し,無翅のオーダーも含めた解析もしていますが,それでも単系統性は支持されます.

その他,Zoraptera + Embiodea, Orthoptera + Phasmatodea, Dictyoptera の単系統性が支持され,wing base のみの解析では Plecoptera + Dermaptera が支持されています.ここら辺は若干結果も不安定ですし,また他の分子や形態の結果とも矛盾する部分もありますので,今後の宿題と言えるでしょう.
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2009年10月06日

カマキリ系統

Reconstructing the origins of praying mantises (Dictyoptera, Mantodea): the roles of Gondwanan vicariance and morphological convergence
Cladistics
Volume 25, Issue 5, Date: October 2009, Pages: 468-514
Gavin J. Svenson, Michael F. Whiting


内容はともかく,POY を使ってないのを見てひっくり返りそうになった.せっかく POY をいぢめる論文を書いてる最中なのに,そんな態度じゃ張り合いが無いじゃないか.
posted by 茶坊主 at 15:10| Comment(0) | 下等新翅類

2009年04月22日

カマキリの起源

Evidence for Carboniferous origin of the order Mantodea (Insecta: Dictyoptera) gained from forewing morphology
OLIVIER BÉTHOUX and FRANK WIELAND
Zoological Journal of the Linnean Society
Volume 156 Issue 1, Pages 79 - 113


現生のカマキリの翅脈相を,気管配列まで含めて検討し,グランドプランを構築.その結果に基づき 'Protorthoptera' と呼ばれる,化石昆虫のまあいわゆるゴミ箱タクソンの中から,いくつかカマキリの stem group となるものを見いだしている.これにより,カマキリの起源年代は,石炭紀後期,これまで考えられていたより約175mya さかのぼる事になった.

翅脈相の解釈は,写真だけじゃちょっと分かり難いところもあるので,そのうち実物を見てみたい.いずれにしても,こういったねちっこい形態論文は大好き.
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2009年02月20日

カカトアルキのステータス

栃内さんのブログで知ったこの記事

A living fossil found in Namibia: Scientific American

内容は自体は本ブログとは直接関係ないのですが(僕のお師匠さんである Bradley Sinclair が出て来たのもオッと思ったのですが,それもまた関係なし),...a new suborder of carnivorous insects known as Mantophasmatode の記述が気になりました.

この扱いは Engel らによって提唱されたものですが(こちらの過去記事参照),一般的に受け入れられて来たということでしょうか.wikipedia の記述も同様になっています.
posted by 茶坊主 at 14:02| Comment(0) | 下等新翅類

2008年01月23日

ガロアムシ化石

DI-YING HUANG, ANDRÉ NEL, JULIAN F. PETRULEVIČIUS (2008)
New evolutionary evidence of Grylloblattida from the Middle Jurassic of Inner Mongolia, north-east China (Insecta, Polyneoptera)
Zoological Journal of the Linnean Society 152 (1), 17–24.


有翅ガロアムシの化石の中国からの報告.既存の科に分類されるため,高次系統の解釈という点では大きなインパクトは無いが,何よりも素晴らしく保存状態がいい!

脊椎動物の世界では,中国からの新たな化石の発見が,Nature など超一流誌に続々と報告されていますが,昆虫でも中国産の化石の報告に今後注目です(ぢつは今ひとつ査読中で,これは昆虫の高次系統に極めて大きなインパクトを与える発見です).
posted by 茶坊主 at 11:17| Comment(0) | 下等新翅類

2007年05月11日

シロアリモドキの精子形態

The sperm structure of Embioptera (Insecta) and phylogenetic considerations
Romano Dallai, Ryuichiro Machida, Yoshie Jintsu, Francesco Frati and Pietro Lupetti
Zoomorphology 126: 53-59


精子形態に基づくシロアリモドキの系統的位置に関する議論.形態や分子から示唆されるシロアリモドキ+ナナフシの近縁性が否定されている.ただし,その単系統性にほぼ疑いの無いゴキブリ+カマキリも否定されるなどおかしな所もあるので,そもそもの系統情報としての価値自体を慎重に考える必要がある.
posted by 茶坊主 at 16:45| Comment(0) | 下等新翅類

2007年04月18日

ジュズヒゲ問題

KAZUNORI YOSHIZAWA (2007)
The Zoraptera problem: evidence for Zoraptera + Embiodea from the wing base
Systematic Entomology 32 (2), 197−204.


内容に関しては,前に書きましたが,正式に出版されたので宣伝も兼ねて.

巻頭論文,気持ちい〜.
posted by 茶坊主 at 08:43| Comment(0) | 下等新翅類

2007年04月16日

社会性ゴキブリ

また先を越されてしまった…

Inward D, Beccaloni G, Eggleton P.
Death of an order: a comprehensive molecular phylogenetic study confirms that termites are eusocial cockroaches.
Biol Lett. 2007 Apr 5; [Epub ahead of print]


ただし,内容は「だから,何??」って感じ.こんなことは分かりきってるわけで,よりたくさんのデータで解析した,と言うだけで Biol Letter に載るの?こんな結果の分かりきった研究をやる動機が,そもそも理解できません.
posted by 茶坊主 at 12:32| Comment(0) | 下等新翅類

2007年04月10日

カカトアルキの頭

またベーチェルくんとこのチームによる,形態学論文です.

E. Baum, C. Dressler, R. G. Beutel
Head structures of Karoophasma sp. (Hexapoda, Mantophasmatodea) with phylogenetic implications
Journal of Zoological Systematics and Evolutionary Research (OnlineEarly Articles).
doi:10.1111/j.1439-0469.2006.00380.x


事細かに見ていますが,要は頭部の形態からはカカトアルキ+ガロアムシが支持されるとのこと.分子通りの結果ですね.

それはともかく,やっぱりこういうベーシックな形態学をやる若い研究者が次々と出てくるあたりが,さすがドイツっちゅう感じです.
posted by 茶坊主 at 15:19| Comment(0) | 下等新翅類

2007年01月12日

コノハムシ化石

PNAS | January 9, 2007 | vol. 104 | no. 2 | 565-569
The first fossil leaf insect: 47 million years of specialized cryptic morphology and behavior
Sonja Wedmann*,, Sven Bradler, and Jes Rust


まあ,タイトルですべてを語り尽くしてしまう論文な訳ですが,読んでて(というか眺めてて)とても楽しい論文です.

日本は昆虫化石の研究者は,北九州の上田さんくらいしかいないのですが,高次系統,形態進化,分子系統のキャリブレーション等々,非常に魅力的な分野だと思います.標本集めに金がかかるのが難点ですが...
posted by 茶坊主 at 14:00| Comment(0) | 下等新翅類

2007年01月09日

ハサミムシの交尾器進化

ブログの趣旨からは若干ずれますが,お向かいの上村さんの研究が nature でレビューされていましたので紹介.ゼミなどでも何度か聞かせていただいたのですが,交尾器進化に関わる,非常に面白い研究です.

Nature 444, 689-692
進化生物学:右利きがやめられない .
Evolutionary biology: Caught right-handed.
A. Richard Palmer


Right-handed penises of the earwig Labidura riparia (Insecta, Dermaptera, Labiduridae): Evolutionary relationships between structural and behavioral asymmetries
Journal of Morphology
Volume 267, Issue 11, Date: November 2006, Pages: 1381-1389
Y. Kamimura


追記
posted by 茶坊主 at 09:46| Comment(2) | 下等新翅類

2006年12月01日

ジュズヒゲ wing base

ジュズヒゲムシの系統的位置付けに関する論文がようやくアクセプトされました.プレプリントをおいておきますので,興味のある方はどうぞ.今回見つけた派生形質は,翅の基部に全く新規の関節が形成されるという顕著なもの(言ってみれば腕が肩甲骨あたりで曲がるようなもの?)で,この問題に対する決定打になると思っています.

Yoshizawa, K. 2007. The Zoraptera problem: evidence for Zoraptera + Embiodea from the wing base. Systematic Entomology, (in press).

アクセプトまで時間がかかった一つの理由が,レフェリーから要求された追加サンプルの入手に手間取ったこと.テロ未遂の影響で,ロンドンからアルコールの液浸標本が送れず,水漬けで送られてきました.この状況が続くとなると,いろいろと面倒なことになりそうです.
posted by 茶坊主 at 11:29| Comment(0) | 下等新翅類

2006年10月13日

ジュズヒゲ問題その2

Rafael JA, Engel MS
A new species of Zorotypus from Central Amazonia, Brazil (Zoraptera : Zorotypidae)
AMERICAN MUSEUM NOVITATES (3528): 1-11 SEP 8 2006


論文の主題はジュズヒゲのブラジルからの1新種の記載ですが,ジュズヒゲ+シロアリモドキを支持する共有派生形質の再検討と,Mirorder Mystroptera(mirorder は order より上,superorder より下の分類階級)の名称の提唱も,本論文中で行っています.

また非常にこっそりと Order Notoptera = Grylloblattodea + Mantophasmatodea という(つまりカカトアルキを独立の目途は認めない)取り扱いをしています.

タイトルだけ見てると見逃しそうですが,密かに重要論文です.
posted by 茶坊主 at 15:48| Comment(0) | 下等新翅類

2006年10月12日

ジュズヒゲ問題

ジュズヒゲムシの系統的位置は,ネジレバネに次いで議論の多い問題です.最近では形態からは準新翅類,分子からは網翅類という結果が出てます.しかし特に分子では long branch attraction が強く疑われる状態で,その点でもネジレバネ問題と良く似ています.

Cephalic anatomy of Zorotypus hubbardi (Hexapoda: Zoraptera): new evidence for a relationship with Acercaria
Rolf Georg Beutel and Daniela Weide
Zoomorphology Volume 124, Number 3 / August, 2005


Yoshizawa, K. & Johnson, K.P. 2005. Aligned 18S for Zoraptera (Insecta): Phylogenetic position and molecular evolution. Molecular Phylogenetics and Evolution 37: 572-580.

ところが,翅の基部構造からこの問題を再検討したところ,ジュズヒゲムシ+シロアリモドキを強く支持する共有派生形質が見いだされました.個人的には,これでこの問題はほぼ解決だろうと思っています.論文はほぼアクセプトされてはいるのですが,レフェリーから要求された追加サンプルの入手に手間取っており,真のアクセプトまではもう少しかかりそうです.先日昆虫学会で発表した要旨とスライドをおいておきますので,参考にしてください.

吉澤和徳 (2006) やっぱり形態!−翅基構造に基づくジュズヒゲムシの系統的位置−
posted by 茶坊主 at 15:29| Comment(0) | 下等新翅類

2006年06月28日

ガロアムシにちょっと追記

コメントというより愚痴ですが.

http://hexapoda.sblo.jp/article/628251.html
posted by 茶坊主 at 09:57| Comment(0) | 下等新翅類

2006年05月30日

シロアリモドキの化石

Engel, M. S. & Grimaldi, D. A. (2006) The earliest webspinners (Insecta: Embiodea). American Museum Novitates 3514: 1-15.

ミャンマーの白亜紀中期の琥珀化石に基づく記載.虫自体は,Evolution of the Insects Fig. 7.13 として,今回の記載に先立ち示されている.

最古のシロアリモドキ,と謳われてはいるが,どこからどう見てもシロアリモドキそのもので,本目の系統的位置を決定する上での新たな情報等は乏しい.むしろ,高次分類体系のレビューや,「シロアリモドキの化石」とされるものの再検討がなされており,その点が有用.
posted by 茶坊主 at 12:00| Comment(0) | 下等新翅類