2006年11月16日

コムシのミトコンゲノム

内顎類(トビムシ,コムシ,カマアシムシ)の系統関係は問題が山盛りです.内顎類は単系統群なのか,3目の関係はどうなのか,そもそもコムシ目は単系統群なのか,と言った点が長い間問題となってきました.

核の 18S, 28S の解析では,内顎類の単系統性,それぞれの目の単系統性,およびコムシ+カマアシムシの姉妹群関係が強く支持される結果が出ていますが,コムシとカマアシムシの塩基置換速度が極端に加速しており,さらに塩基組成が GC に偏っていることから,long branch attraction が強く疑われ,これをもって内顎類の系統関係が解決した,というにはほど遠い状態です.

で,直接高次系統とは関係ないのですが,次の論文は上記のような観点から見ると非常に興味深いと思います.

Gene. 2006 Oct 15;381:49-61.
The mitochondrial genomes of Campodea fragilis and Campodea lubbocki (Hexapoda: Diplura): High genetic divergence in a morphologically uniform taxon.
Podsiadlowski L, Carapelli A, Nardi F, Dallai R, Koch M, Boore JL, Frati F.


著者らは,形態的に良く似た2種間の遺伝的分化が大きい理由を,分岐時期の深さにあると考えているようですが,ぼくは塩基置換速度の加速と見る方が妥当なのではないかと思います.

ぼくが専門としているシラミでは,塩基置換速度の加速が,核,ミトコン両方のリボソーム,アミノ酸コード領域いずれでも見られます.もし内顎類でも,同様に塩基置換速度の加速がゲノム全体に見られる傾向であるとすれば,いくらシーケンスしてデータを集めまくったところで,結局分子系統の結果は疑わしいまま,ということになります.

先日紹介したドレスデンミーティングの論文集で,町田さんがこの問題に発生学から切り込んでおり,内顎類が非単系統群であることを支持しています.内顎類の問題に限らず,昆虫の一番深い分岐を塩基配列データで解きほぐそうというアプローチは,もうすでに袋小路に入っている,というのがぼくの率直な感想.形態や発生からのアプローチが,もっと見直されるだろうと思います.
posted by 茶坊主 at 09:47| Comment(2) | 無翅昆虫
この記事へのコメント
こっそりとコメント寄せ。4月から続いていたとは。

これからもちょくちょく寄らさせてもらいます。
Posted by FF at 2006年11月21日 20:20
をを,FF さま.コメントありがとうございます.個人的なメモをついでに公開しているようなもんですが,お役に立てば幸いです.でぃぷてら系統進化メモブログ,やってくださいよ.
Posted by 茶坊主 at 2006年11月22日 08:50
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