2008年04月04日

Kukalova-Peck

Kukalova-Peck という人は,昆虫の祖先形質状態に関して非常に大胆な仮説を提唱している化石研究者です.しかし,現生昆虫に比べてはるかに状態の悪い化石から,現生昆虫ですら観察が困難な微細構造を描き出しており,彼女の化石の解釈に関しては(ぼくも含め)多くの研究者から疑問の声が上がっていました.

下記の論文は,そう言った疑問に対する決定打となりうる論文です.

OLIVIER BÉTHOUX, DEREK E. G. BRIGGS (2008)
How Gerarus lost its head: stem-group Orthoptera and Paraneoptera revisited.
Systematic Entomology
doi:10.1111/j.1365-3113.2008.00419.x


Gerarus という属の化石昆虫は,clypeus が肥大することなどによって,Kukalova-Peck によって準新翅類の stem group に位置づけられています.しかし,標本を電顕等で詳細に再検討した結果,その根拠となる clypeus の肥大は,化石の preparation に伴う人工産物であったことが明らかとなっています,さらに,この化石には exite がみられ,これが Kukalova-Peck の昆虫の祖先形質状態の解釈に非常に重要な役割を果たしている訳ですが,実際には exite の存在も同様に artefact だった様です.

著者らは言葉 (intensive preparation) を慎重に選んでますが,この化石頭部が「彫刻」によって作り出された可能性をもにおわせる(これらの構造が dense scratches によって取り囲まれている;周辺の構造より深い位置にある等)証拠が見て取れます.
posted by 茶坊主 at 11:39| Comment(3) | 六脚類
この記事へのコメント
やはりそういう結論になりましたか…。アクノリッジメントには、Kukalova-Peck本人もこの論文を読んでコメントもしているように書いてありますが、"彫刻"についてはどのように申し開きをしたのか、興味深いところです。ともあれ、本論文によってあやしかった復元図がきちんと反証されて、ひと安心ですね。
Posted by シロハラクイナ at 2008年04月06日 10:18
これまでも,「化石の再検討の結果,そのような構造は観察されなかった」と言ったような言及はあったのですが,ここまで詳細に標本を再検討して,しかも「彫刻」の証拠まで示したのは初めてだと思います.翅の基部構造をやっていると,Kukalova の解釈が常に邪魔な存在となって来ましたが,今後はレフェリーへの対応もやりやすくなります.
Posted by 茶坊主 at 2008年04月07日 09:51
たしかに Acknowledgments に Kukalova も登場しますね.というより,submitted manuscript に対して6人もコメントを寄せている!Syst. Entomol. のレフェリーは普通3人なので,かなり揉めに揉めたんでしょうね.
Posted by 茶坊主 at 2008年04月07日 12:01
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